
マルコチェアのS201モデルは年々人気が高まってきている椅子で、ビンテージの市場ではリザルトチェアとほとんど同じ値段で売買されています。

マルコチェアとリザルトチェアは、どちらもそれぞれに特徴のある美しい椅子だと思います。マルコチェアはフリソ・クラマーの設計ではないですが、ディティールのデザインには目を見張るものがあります。
椅子に関して
オランダの家具メーカーmarko社(現在は別の家具メーカーのeromes社と合併)によって、1960年代に学校用に作られた椅子です。当時大きな影響力を持っていたデザイナーのフリソ・クラマー(Friso Kramer)がデザインしたスクールチェアである、リザルト・チェア(Result Chair)の影響をかなり受けています。


フォルムについて
非常にバランスの良い、大人が座りやすいサイズに設計されています。置いた際の佇まいと言いますか、ラインがとても綺麗な椅子だと思います。とてもシンプルなのですが、見る角度によって形が異なって見える、飽きのこない作りになっています。


色やバリエーションについて
ブラックのフレームに、ブラウンのプライウッドのモデルが一番多く見かけるモデルですが、プライウッドがブラックだったり、フレームがホワイトだったりするモデルもあります。数は少ないですが、アームレスト付きのモデルもたまに見かけます。アームレスト付きは、先生が座る為に作られた椅子だと聞いています。その為数が少ないようですね。



マルコチェアS201は、背もたれの部分から脚にかけてのラインが真っ直ぐですが、リザルトチェアは背もたれの部分が少し丸みを帯びています。
意外とこの部分がデザインに大きく影響していて、斜めから見ると、より違いがはっきり感じられます。


連結部分は普段はシートに隠れて見えない部分ですが、座った際に重さで脚が外側に開かないようにするための、とても大切なパーツです。
リザルトチェアはここが半円形になっていますが、マルコチェアは中心に向かって少し折れ曲がった一本の棒です。どちらもそれぞれ無駄のない綺麗な設計ですが、マルコチェアの方がより削ぎ落としたデザインの印象を受けます。
素材について
シートと背もたれはプライウッドで出来ています。プライウッドは衝撃に強く、シミや汚れなどへの耐性もある素材です。学校などでのハードな使用をイメージして設計されているので、自宅での使用はもちろん、カフェなどでも気兼ねなく使える、日常づかいにちょうど良い椅子だと言えます。

プライウッドは色や模様に個体差がありますが、ブラウンのモデルは、独特の少しレトロな色味だと思います。今の新しいプライウッドにはない、ビンテージならではの深みのある色味だと思います。


脚の素材はスチールでできており、脚の部分がコの字に曲げられているのが特徴です。鉄板をコの字に曲げることで、鉄の構造を強化することができます。この技術により、椅子自体の重さを軽減することができ、椅子を倒した際のプライウッドへのダメージが少なくなりました。これは元々リザルトチェアで使用されていた技術のようです。
インテリアとの相性について
北米やヨーロッパを中心にここ数年で起こっている、ダッチインダストリアルのブームからもわかるように、リノベーションされた空間との相性がとても良いです。
買い付けでヨーロッパへ行く際によく見かけるのが、昔の構造を活かしてリノベーションをした空間に、マルコチェアやリザルトチェアなどが置かれているカフェやショップです。元々非常にシンプルなデザインなので、インテリアに合わせやすい椅子だと思います。

まとめ
作られてから60年近くが経過しているのに、未だに新鮮な魅力を放ち続けているこの椅子は、最も「オランダのインダストリアルデザインらしい」椅子だと思います。
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